COLUMN コラム
注文住宅の住宅ローンはいくら借りる?借入額の決め方・変動固定・つなぎ融資を4資格者が解説

この記事でわかること
- 「借りられる額」と「無理なく返せる額」がなぜ数百万円もずれるのか
- 年収別に見た借入額の目安と、毎月返済額の現実的なライン
- 変動金利・固定期間選択・全期間固定(フラット35)の選び分け
- 注文住宅だけに発生する「つなぎ融資」「分割実行」の仕組みと費用
- 事前審査から融資実行までの流れと、審査に落ちる・減額される原因
- 夫婦や親子で借りる3つの方法(ペアローン/連帯債務/収入合算)と団信の選び方
注文住宅の住宅ローンで失敗しないコツは、「いくら借りられるか」を銀行に聞く前に、「毎月いくらまでなら返し続けられるか」を自分たちで先に決めておくことです。
住宅ローンは、金融機関が出してくる「借入可能額」がそのまま予算になってしまいやすい商品です。ところが、審査で出る上限額と、子どもの教育費や老後資金まで含めて無理なく返せる額との間には、年収600万円台なら1,000万円以上の開きが出ることも珍しくありません。ここを逆算せずに土地や間取りを決めてしまうと、引き渡しの後で家計が回らなくなります。
さらに注文住宅には、建売住宅や分譲マンションにはない落とし穴があります。建物が完成する前に、土地代金や着工金の支払いが先に来るという点です。住宅ローンは原則として建物の引き渡し時にしか実行されないため、その間を埋める「つなぎ融資」や「分割実行」の仕組みを知らないまま進めると、資金がショートするか、想定外の数十万円を負担することになります。
私たち株式会社アラカワは、堺市・南大阪で注文住宅、リフォーム、不動産業を行う地域工務店です。代表の荒川は元大工で、二級建築士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーの資格を持っています。住宅ローンは「土地の契約条件(宅建士)」「工事の請負契約と工程(建築士・元大工)」「家計と返済計画(FP)」が同時に絡む分野なので、これらを一人の担当が横断して見られると、資金の流れで詰まることがありません。その立場から、注文住宅の住宅ローンの組み立て方を実務ベースで整理しました。
1. 結論:住宅ローンは「借りられる額」ではなく「返せる額」から決める
注文住宅の住宅ローンで最初に決めるべきことは、次の3つです。
- 毎月返済額の上限:手取り月収から、返し続けられる金額を先に決める
- 借入額:その毎月返済額から逆算した金額を上限にする(銀行の上限額ではない)
- お金が必要になるタイミング:注文住宅は引き渡し前に土地代・着手金・中間金の支払いが来る
順番が大事です。土地や間取りを決めてから「いくら借りられますか」と銀行に聞くのではなく、返せる額を先に決めて、その範囲で土地と建物に配分するのが正しい順序です。予算配分の考え方は、別記事「土地と建物の予算配分で失敗しない考え方」で詳しく解説しています。
そのうえで注文住宅特有の論点が2つあります。つなぎ融資・分割実行というお金の流れ(6章)と、工事請負契約を結ばないと本審査に進めないという順番の制約(8章)です。この2つを知らずに進めると、「土地は押さえたのにローンが間に合わない」という事態が起こります。
この記事では、返せる額の逆算(3〜4章)→ 金利タイプの選び方(5章)→ 注文住宅特有の資金の流れ(6〜7章)→ 審査の実務(8〜10章)→ 借りたあとの話(11章)の順に整理します。
2. 注文住宅の住宅ローンは建売・マンションとここが違う
同じ「住宅ローン」でも、注文住宅は建売住宅や分譲マンションと進み方がまったく違います。違いは大きく3つです。
2-1. 支払いが複数回に分かれる
建売やマンションは、原則として「契約 → 決済・引き渡し」で、住宅ローンの実行は1回だけです。一方の注文住宅(特に土地なし)は、次のように支払いが分かれます。
- 土地の手付金(土地契約時・現金)
- 土地の残代金(土地の決済時)
- 建物の着手金(工事請負契約・着工時)
- 建物の中間金(上棟時など)
- 建物の最終金(完成・引き渡し時)
住宅ローンの融資実行は原則⑤の引き渡し時です。つまり①〜④は、住宅ローンが下りる前に払わなければなりません。ここを埋める仕組みが「つなぎ融資」または「分割実行」です(6章で詳述)。
2-2. 本審査に「工事請負契約書」が要る
本審査では、借入対象の物件を金融機関が確認します。注文住宅の場合、その資料が工事請負契約書と、確定したプラン・見積書、建築確認済証です。つまり、建物の内容が固まらないと本審査に進めません。
一方で土地の売買契約には決済期限(一般に1〜3か月)があります。土地の決済期限までに建物の契約を固めて本審査を通すという時間的な制約が生まれるのが、注文住宅の一番の難所です。
2-3. 完成までの期間が長い
土地探しから引き渡しまでは、順調でもおおむね1年〜1年半かかります。その間に金利情勢や自分たちの収入状況が変わる可能性があります。事前審査の結果は一般に有効期限(3〜6か月程度)があり、期限が切れれば取り直しになります。
まとめると、注文住宅の住宅ローンは「金額の設計」だけでなく「時間の設計」が必要です。家づくり全体の流れは「堺市で注文住宅を建てる完全ガイド」、土地から進める場合の順序は「土地探しから注文住宅を建てる流れ」もあわせてご覧ください。
3. 「借入可能額」と「返せる額」はどこで差がつくのか
住宅ローンの相談で最も多い誤解が、「銀行が貸してくれる額=自分たちが返せる額」という思い込みです。この2つはまったく別の計算で出てきます。

3-1. 銀行が見ているのは「返済負担率」
金融機関は、年収に占める年間返済額の割合(返済負担率)で上限を判断します。目安は次のとおりです。
- フラット35:年収400万円未満は30%以下、年収400万円以上は35%以下
- 民間金融機関:おおむね30〜40%(金融機関により異なる)
ここで重要なのが2点あります。
- 分母は「額面年収」:手取りではありません。額面600万円なら手取りはおおむね460〜480万円程度です
- 審査は「審査金利」で計算する:実際に借りる金利ではなく、将来の金利上昇を見込んだ3〜4%程度の金利で返済額を計算する金融機関が多い(変動金利で借りる場合)
つまり、銀行の上限額は「額面年収 × 35% ÷ 審査金利での返済額」で機械的に出る数字です。そこには、子どもの教育費も、車の買い替えも、老後資金も、マンションと違って自分持ちになる修繕費も入っていません。
3-2. 「返せる額」は手取りから逆算する
FPとして家計を見るときは、逆に次の順で考えます。
- 手取り月収を確認する(額面ではなく振込額)
- そこから毎月返済額の上限を決める(手取りの20〜25%以内が一つの目安)
- その毎月返済額から、金利・期間を当てはめて借入額を逆算する
さらに、住宅ローンの返済とは別に、マイホームになると毎月かかるようになる固定費を必ず見込みます。
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 年10万〜15万円程度 | 新築住宅は一定期間軽減あり |
| 火災保険・地震保険 | 年2万〜6万円程度 | 5年一括払いが主流 |
| 修繕積立(自分で貯める) | 月1万〜1.5万円 | 外壁・屋根・給湯器の更新用 |
| 光熱費の増加 | 月0.5万〜1万円程度 | 賃貸より面積が広くなるため |
賃貸の家賃と同じ金額の返済なら大丈夫、とはならないのはこのためです。同じ返済額でも、月2万〜3万円ぶん家計は重くなります。
3-3. 毎月返済額の早見表(借入1,000万円あたり)
金利と期間から毎月返済額を出す基準として、借入1,000万円あたりの毎月返済額を覚えておくと便利です(元利均等返済)。
| 金利 | 返済期間35年 | 返済期間30年 | 返済期間25年 |
|---|---|---|---|
| 0.5% | 約25,958円 | 約29,915円 | 約35,466円 |
| 1.0% | 約28,228円 | 約32,172円 | 約37,700円 |
| 1.5% | 約30,620円 | 約34,512円 | 約39,994円 |
| 1.8% | 約32,109円 | 約35,970円 | 約41,419円 |
| 2.0% | 約33,127円 | 約36,962円 | 約42,385円 |
使い方:借入3,500万円・金利1.8%・35年なら、32,109円 × 3.5 = 約11.2万円/月です。逆に、返せる額が月11万円なら、110,000 ÷ 32,109 × 1,000万円 = 約3,430万円が借入の上限になります。
4. 【年収別】無理なく返せる借入額の目安
3章の考え方を、年収別の数字に落とし込みます。「銀行の上限」と「無理のないライン」がどれだけ違うかを並べたのが次の表です。
前提条件:返済期間35年・元利均等返済・ボーナス返済なし。①は返済負担率35%・審査金利3.0%で計算した審査上の上限イメージ、②③は実行金利1.8%で計算した目安。実際の審査基準・金利は金融機関ごとに異なります。
| 年収(額面) | ①審査上の上限イメージ (負担率35%・審査金利3.0%) | ②無理のない目安 (負担率25%・金利1.8%) | ②の毎月返済額 | ③堅実ライン (負担率20%・金利1.8%) | ③の毎月返済額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 約3,030万円 | 約2,600万円 | 約8.3万円 | 約2,080万円 | 約6.7万円 |
| 500万円 | 約3,790万円 | 約3,240万円 | 約10.4万円 | 約2,600万円 | 約8.3万円 |
| 600万円 | 約4,550万円 | 約3,890万円 | 約12.5万円 | 約3,110万円 | 約10.0万円 |
| 700万円 | 約5,310万円 | 約4,540万円 | 約14.6万円 | 約3,630万円 | 約11.7万円 |
| 800万円 | 約6,060万円 | 約5,190万円 | 約16.7万円 | 約4,150万円 | 約13.3万円 |
年収600万円で見ると、審査上の上限(約4,550万円)と堅実ライン(約3,110万円)の差は約1,440万円です。この差がそのまま「返済がきついかどうか」の分かれ目になります。
4-1. ②と③のどちらを選ぶか
判断の目安は次のとおりです。
- ③(負担率20%)寄りにすべき:子どもがこれから増える/教育費のピークが返済期間と重なる/共働きだが片方が時短や退職の可能性がある/車を2台維持する/転職の可能性がある
- ②(負担率25%)でも成立しやすい:自己資金が総額の1〜2割ある/親からの贈与や援助が確定している/子どもが独立目前、または予定がない/勤務先の住宅手当が長期間続く
共働きで「今の世帯年収」をそのまま基準にするのは危険です。産休・育休・時短で世帯年収が2〜3年下がる期間があるなら、その期間の収入で返せるかで判断してください。
4-2. 堺市の総額と突き合わせる
借入額の目安が出たら、実際に建てられる家の総額と突き合わせます。堺市で土地なし・延床35坪の注文住宅なら、総額はおおむね4,000万〜5,500万円が目安です(土地の価格帯で変動)。
つまり、土地なしで進めるなら、自己資金を含めて年収600万〜700万円台が一つの現実的なラインになります。年収500万円台なら、土地価格を抑えたエリアを選ぶ、延床を控えめにする、自己資金を厚くするといった調整が必要です。
エリア別の土地価格帯は「堺市で注文住宅の土地探し」、総額の内訳は「土地なしで注文住宅を建てる総額はいくら?」で詳しく解説しています。すでに土地をお持ちの方や建て替えの場合は「堺市で家を建て替える費用と流れ」も参考になります。
5. 金利タイプの選び方|変動・固定期間選択・全期間固定
住宅ローンの金利タイプは大きく3つです。「どれが得か」ではなく、「どのリスクなら受け入れられるか」で選びます。
5-1. 3つのタイプの比較
| 金利タイプ | 特徴 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 変動金利 | 半年ごとに金利を見直し。当初の金利が最も低い | 借入額に余裕がある/繰上返済できる貯蓄がある/共働きで収入に厚みがある | 金利が上がれば返済額も上がる。上昇局面では総返済額が読めない |
| 固定期間選択型(10年固定など) | 一定期間だけ金利を固定。期間終了後は再選択 | 教育費のピークまでは返済額を固定したい | 固定期間終了後に金利が跳ねるリスク。5年ルール・125%ルールが適用されない商品が多い |
| 全期間固定(フラット35など) | 完済まで金利が変わらない。総返済額が最初に確定 | 返済額を絶対にぶらしたくない/借入額が年収に対して大きめ/自営業・転職直後 | 当初金利は最も高い。金利が下がっても恩恵はない(借り換えは可能) |
5-2. 変動金利の「5年ルール・125%ルール」を誤解しない
変動金利には、多くの金融機関で次の仕組みがあります。
- 5年ルール:金利が上がっても、毎月返済額は5年間変わらない
- 125%ルール:返済額を見直すときも、直前の返済額の125%が上限
一見安心ですが、これは返済額が据え置かれるだけで、支払うべき利息が減るわけではありません。金利上昇局面では、毎月返済額のうち利息の割合が増え、元金がなかなか減りません。極端な場合、利息が返済額を上回った分が「未払利息」として残り、最後にまとめて請求されることがあります。
「5年ルールがあるから変動で大丈夫」ではなく、「金利が2%上がっても払えるか」で判断してください。借入3,500万円・35年なら、金利が0.6%から2.6%に上がると毎月返済額はおよそ9.2万円から12.7万円へ、月3.5万円ほど増える計算です。
5-3. 迷ったときの現実的な判断軸
- 借入額が年収の6倍を超えるなら、変動一本は避けて全期間固定か固定期間選択を検討する
- 繰上返済用の貯蓄が別にあるなら、変動のメリットを取りにいける
- どちらも捨てがたい場合はミックス(変動+固定の併用)という選択肢もある(金融機関により対応)
- 省エネ性能の高い家を建てるなら、フラット35S・子育てプラスで当初期間の金利引下げが受けられる
性能による金利引下げや住宅ローン減税の性能要件は、「堺市で注文住宅を建てるときに使える補助金・減税」で制度ごとにまとめています。金利タイプの選択と、補助金・減税を狙う性能の選択は、同じタイミングで決めるのが効率的です。
6. つなぎ融資と分割実行|注文住宅で一番つまずくところ
ここが注文住宅の住宅ローンで最も相談が多く、そして知らないと数十万円損をするところです。

6-1. なぜ必要になるのか
2章のとおり、注文住宅では住宅ローンが実行される前に、土地の残代金・着手金・中間金の支払いが来ます。この「先に必要なお金」を用意する方法は3つです。
| 方法 | 仕組み | 費用 | 扱う金融機関 |
|---|---|---|---|
| つなぎ融資 | 住宅ローンとは別の短期ローンで立て替え、引き渡し時に住宅ローンで一括返済 | つなぎ期間の利息+事務手数料 | フラット35を扱う金融機関・一部の民間 |
| 分割実行(土地先行融資) | 住宅ローン自体を土地決済時・着工時・上棟時・完成時と複数回に分けて実行 | 実行のたびに印紙・事務手数料がかかる場合あり | 都市銀行・地方銀行に多い |
| 自己資金で立て替え | 手持ち資金で先に払う | 費用ゼロ | ― |
フラット35は融資実行が引き渡し時の1回だけなので、フラット35を使うなら基本的につなぎ融資が必要になります。
6-2. つなぎ融資の費用はいくらか
つなぎ融資の金利は、住宅ローンより高く年2〜3%台が一般的です。実際の費用を試算します。
前提:土地代2,000万円を引き渡しの8か月前に決済、着手金1,000万円を6か月前に支払い、つなぎ金利2.5%
- 土地分の利息:2,000万円 × 2.5% × 8/12 = 約33.3万円
- 着手金分の利息:1,000万円 × 2.5% × 6/12 = 約12.5万円
- 事務手数料:約10万〜11万円
- 収入印紙:約2万円
合計でおおむね55万〜60万円。これは総額に含めて考えないと、引き渡し前に現金が足りなくなります。
工期が延びるとつなぎ期間も延び、利息が増えます。「着工が2か月遅れて利息が7万円増えた」というのは実際に起こります。契約前に工程表をもらい、余裕を持った資金計画にしておくことが大切です。
6-3. 分割実行は「金利が確定するタイミング」に注意
分割実行の場合、適用される金利は「初回実行時」か「最終実行時」かが金融機関で異なります。ここを確認しないまま土地決済から1年近く空くと、想定と違う金利になることがあります。
また、分割実行中は元金の一部しか実行されていないため、返済(利息のみ、または元利)が完成前から始まるケースもあります。「引き渡しまで返済ゼロ」と思い込んでいると、家賃と返済の二重払い期間が発生します。
6-4. 金融機関を選ぶときの確認項目
注文住宅で金融機関を選ぶときは、金利の低さより先に「注文住宅に対応できるか」を確認してください。具体的には次の5点です。
- つなぎ融資、または分割実行に対応しているか
- 分割実行の場合、実行回数の上限と1回あたりの手数料
- 適用金利は初回実行時/最終実行時のどちらで決まるか
- 土地の決済期限までに本審査が間に合うスケジュールか
- 諸費用(登記費用・つなぎ利息・外構費)も住宅ローンに含められるか
ネット銀行は金利が低い一方で、つなぎ融資に非対応、または分割実行の回数が少ないことがあります。土地から進める注文住宅では、ここが実務上の分かれ目になります。
7. 住宅ローンの諸費用と、現金で用意する額
住宅ローンそのものにも費用がかかります。借入額の3〜5%程度を見込んでおくのが目安です。
7-1. 借入3,500万円のケース(概算)
| 項目 | 目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 融資事務手数料(定率型2.2%) | 約77万円 | 定額型(3万〜5万円)+保証料の商品もある |
| 保証料 | 0円〜約72万円 | 定率手数料型は保証料0円が主流。外枠一括なら35年で借入額の2%前後 |
| 印紙税(金銭消費貸借契約書) | 2万円 | 電子契約なら不要 |
| 抵当権設定登記の登録免許税 | 約3.5万円 | 債権額×0.4%、住宅用家屋証明で0.1%に軽減 |
| 司法書士報酬 | 約5万〜10万円 | 建物表示登記・所有権保存登記は別途 |
| 火災保険・地震保険(5年一括) | 約15万〜30万円 | 建物の構造・補償範囲で大きく変動 |
| つなぎ融資の利息・手数料 | 約40万〜60万円 | 6章参照。土地なしの場合 |
合計でおおむね140万〜180万円。土地ありの建て替えならつなぎ融資分が減ります。
7-2. 「現金で払う必要があるお金」を分けて考える
諸費用の中には住宅ローンに組み込めるものと、必ず現金で先に払うものがあります。
必ず現金が必要になりやすいもの
- 土地の手付金(土地価格の5〜10%程度。契約時)
- 建物の契約時の手付金・着手金の一部
- 印紙税、登記費用の一部
- 引っ越し費用、家具・家電、カーテン・照明
- 地鎮祭・上棟式(実施する場合)
目安として、最低でも100万〜200万円の現金は、ローンとは別に用意しておく必要があります。ここが不足すると、土地の契約そのものができません。
現金の準備額については「土地なしで注文住宅を建てる総額はいくら?」でも詳しく整理しています。総額と自己資金のバランスは「堺市で注文住宅を建てる費用と進め方」もあわせてご覧ください。
8. 事前審査から融資実行までの流れとスケジュール
注文住宅の住宅ローンは、土地・建物・ローンの3つの手続きが並行して動きます。順番を間違えると土地の決済期限に間に合いません。
8-1. 全体の流れ(8ステップ)
| ステップ | やること | 目安の時期 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 1. 資金計画 | 返せる額から借入額を逆算 | 土地探しの前 | ここが本記事の3〜4章 |
| 2. 事前審査(仮審査) | 年収・勤務先・借入状況で仮判断 | 土地を探し始める前後 | 土地の申込前に済ませておく。結果は3〜5営業日 |
| 3. 土地の売買契約 | 手付金の支払い | 事前審査の承認後 | 住宅ローン特約(ローン否決なら白紙解除)を必ず付ける |
| 4. 建物のプラン・見積確定 | 工事請負契約 | 土地決済の1〜2か月前 | 本審査に必要。ここが一番タイト |
| 5. 本審査申込 | 契約書・確認済証などを提出 | 工事請負契約の直後 | 結果まで1〜3週間 |
| 6. 金銭消費貸借契約(金消契約) | 借入条件の確定 | 本審査承認後 | 金利タイプ・返済期間を最終決定 |
| 7. 融資実行 | 土地決済・着工金・中間金・最終金 | つなぎ融資/分割実行 | 6章参照 |
| 8. 引き渡し・入居 | 登記・返済開始 | 完成後 | 翌年に住宅ローン減税の確定申告 |
土地探しから引き渡しまでは、順調に進んで1年〜1年半が目安です。
8-2. 事前審査は「土地を探す前」に受ける
よくある失敗が、良い土地が出てから事前審査を受けようとするパターンです。人気の土地は申込が重なるため、事前審査の承認済みという条件で優先されることが実務上あります。
さらに、事前審査を先に受けておけば、自分たちの借入枠がわかった状態で土地を探せるため、予算オーバーの土地に時間を使わずに済みます。土地探しの進め方は「土地探しから注文住宅を建てる流れ」で詳しく解説しています。
8-3. 「住宅ローン特約」は必ず付ける
土地の売買契約には、住宅ローンが承認されなかった場合に契約を白紙解除できる「住宅ローン特約(融資利用の特約)」を必ず付けてください。これがないと、ローンが通らなくても手付金が返ってこない、あるいは違約金が発生する可能性があります。
特約には期限があります。期限内に本審査の結果を出す必要があるため、工事請負契約をいつまでに結べるかを工務店と事前に握っておくことが重要です。ここは宅建士と建築側の両方を見られる担当がいると、日程の設計を間違えません。
9. 審査に落ちる・減額される原因と、やってはいけないこと
事前審査は通ったのに本審査で落ちる、あるいは希望額から減額される。この原因はほぼパターンが決まっています。
9-1. 落ちる・減額される主な原因
| 原因 | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 他の借入 | 車のローン、カードローン、リボ払い、奨学金 | 事前審査の前に完済または残高を減らす |
| クレジットカードの利用可能枠 | 使っていなくても枠自体を借入とみなす金融機関がある | 使わないカードは解約しておく |
| 携帯端末の分割払いの延滞 | 通信料と一体のため、延滞の自覚がないまま信用情報に記録される | 事前に信用情報を自分で開示して確認 |
| 勤続年数・転職 | 転職直後は年収の実績が確認できない | 転職は審査完了後にする |
| 健康状態 | 団信に加入できないと借りられない(民間ローン) | ワイド団信、または団信任意のフラット35を検討 |
| 物件側の要因 | 再建築不可、接道不良、床面積が要件未満 | 土地の契約前に建築可能か確認 |
| 申告内容の不備・虚偽 | 他の借入を書かない、年収を多く書く | 信用情報で必ず判明する。正確に申告する |
9-2. 審査中にやってはいけない5つのこと
- 転職する:勤続年数がリセットされ、本審査で否決されることがあります
- 車を買う・新たにローンを組む:返済負担率が変わり、減額または否決の原因になります
- クレジットカードを新規作成する:申込情報が信用情報に記録されます
- 複数の金融機関に一度に大量申込する:短期間の多重申込は不利に働くことがあります
- 公共料金・カードの支払いを遅らせる:本審査の直前に延滞情報が付くと致命的です
「引き渡しが終わるまでは、家計の状態を変えない」が鉄則です。家具・家電の分割払いも、引き渡し後にしてください。
9-3. 信用情報は自分で確認できる
自分の信用情報は、CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターに開示請求すれば確認できます(各1,000円程度)。過去に延滞の心当たりがある方は、土地を探し始める前に確認しておくと安心です。記録は完済から5年程度で消えるため、時期によっては待つ判断もあり得ます。
10. 夫婦・親子で借りる方法と、団信の選び方
世帯年収で借入額を増やす方法は3つあります。それぞれ住宅ローン減税・団信・持分の扱いが違うので、選び方を間違えると後で困ります。
10-1. 3つの借り方の比較
| 方式 | 契約 | 住宅ローン減税 | 団信 | 持分・登記 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| ペアローン | 夫婦それぞれが別々に契約(2本) | 2人とも受けられる | 2人とも加入 | 2人の共有 | 諸費用が2本分かかる。どちらかが亡くなってももう1本は残る |
| 連帯債務 | 契約は1本、2人とも債務者 | 2人とも受けられる | 主債務者のみ(夫婦連生団信がある商品も) | 2人の共有 | 取扱いのある金融機関が限られる(フラット35など) |
| 収入合算(連帯保証) | 契約は1本、合算者は保証人 | 主債務者のみ | 主債務者のみ | 原則、主債務者の単独 | 合算者は減税も団信もなし。合算できる割合に上限がある場合も |
10-2. 選ぶときの判断ポイント
- 2人とも住宅ローン減税を受けたいなら、ペアローンまたは連帯債務
- どちらかが亡くなったときに全額が消えてほしいなら、連帯債務+夫婦連生団信、または収入合算(主債務者に集約)
- 将来どちらかが退職・時短する可能性が高いなら、借入を主債務者に寄せるほうが安全(返済を1人で背負える範囲に)
離婚した場合、ペアローンは最も後始末が難しくなります。名義変更には金融機関の承諾が必要で、単独では返済能力が足りないと認められないことが多いためです。縁起の話ではなく、契約上のリスクとして知ったうえで選ぶべきポイントです。
10-3. 親子で借りる(親子リレー返済)
親子で返済を引き継ぐ「親子リレー返済」を使うと、親の年齢では組めない長期の返済期間を、子の年齢で設定できる場合があります。二世帯住宅で使われることが多い方式です。詳しくは「堺市で二世帯住宅を建てる費用と間取り」で解説しています。
10-4. 団信は「上乗せ金利」と保障のバランスで選ぶ
団体信用生命保険(団信)は、債務者が亡くなった場合などに住宅ローンの残高がゼロになる保険です。民間の住宅ローンでは加入が必須で、保険料は金利に含まれています。
| 団信の種類 | 金利上乗せの目安 | 内容 |
|---|---|---|
| 一般団信 | 0%(金利に含む) | 死亡・高度障害 |
| がん保障付き(50%/100%) | 0.1〜0.2%程度 | がんと診断確定で残高の50%または全額が消える |
| 三大疾病・八大疾病保障 | 0.2〜0.3%程度 | がん・急性心筋梗塞・脳卒中など |
| ワイド団信 | 0.3%程度 | 持病があっても加入しやすい |
上乗せ0.2%は、借入3,500万円・35年なら総返済額でおよそ130万〜140万円の増加です。すでに加入している生命保険・医療保険と保障が重複していないかを確認し、重複するなら既存の保険を見直して保険料を下げるほうが合理的なこともあります。ここはFPの視点が最も活きる場面です。
11. 借りたあとの話|繰上返済・借り換え・住宅ローン減税との関係
住宅ローンは、借りて終わりではありません。借りたあとの選択で、総返済額は数百万円変わります。
11-1. 繰上返済は「期間短縮型」が有利
繰上返済には2種類あります。
- 期間短縮型:毎月返済額は変えず、返済期間を短くする → 利息の軽減効果が大きい
- 返済額軽減型:期間は変えず、毎月返済額を減らす → 家計の月々の余裕が増える
利息を減らす目的なら期間短縮型が有利です。ただし、教育費のピークが迫っているなら、返済額軽減型で月々の負担を下げる判断もあります。
11-2. 住宅ローン減税の期間中は、急がないほうが得なことも
住宅ローン減税は、年末残高の0.7%が13年間、所得税・住民税から控除されます。ここで重要なのが、繰上返済すると年末残高が減り、控除額も減るという点です。
借入金利が控除率0.7%を下回っている場合(変動金利0.5%など)、繰上返済で減る利息より、失う控除額のほうが大きくなることがあります。この場合は、減税期間の13年が終わってから繰上返済するほうが有利です。
また、繰上返済で返済期間が10年未満になると、住宅ローン減税の対象から外れます。これは金額インパクトが大きいので、必ず確認してください。住宅ローン減税の性能区分・借入限度額は「堺市で注文住宅を建てるときに使える補助金・減税」で詳しく解説しています。
11-3. 借り換えを検討する目安
一般的に、次の3つを満たすと借り換えのメリットが出やすいとされます。
- 金利差が年1.0%以上ある
- ローン残高が1,000万円以上ある
- 残りの返済期間が10年以上ある
ただし、借り換えには新たに事務手数料・保証料・登記費用(数十万円)がかかります。また、借り換え後は当初の団信が切り替わるため、健康状態によっては新しい団信に入れないこともあります。金利差だけで判断しないことが大切です。
12. 家づくり無料相談会で確認できること
相談会では、注文住宅の住宅ローンについて次の内容を一緒に整理できます。
- 手取り月収と将来の支出から逆算した、無理なく返せる借入額
- その借入額で、堺市のどのエリア・どの延床なら建てられるか
- 変動・固定期間選択・全期間固定のどれが、ご家庭の状況に合うか
- つなぎ融資・分割実行のどちらで進めるか、その費用の見込み
- 土地の決済期限から逆算した、工事請負契約と本審査のスケジュール
- ペアローン・連帯債務・収入合算のどれを選ぶか、団信の保障範囲
- 補助金・住宅ローン減税と、狙う住宅性能の組み合わせ
私たちは土地の契約条件(宅建士)、工程と工事請負契約(建築士・元大工)、返済計画(FP)を一人の担当が横断して見られます。そのため、「土地の決済期限に本審査が間に合わない」「つなぎ融資の費用を見込んでいなかった」といった、注文住宅特有の詰まり方を事前に避けられます。
相談会で何を聞けばよいか迷う方は、別記事「注文住宅の相談会で聞くべき10の質問」も参考になります。会社選びの視点は「堺市の工務店の選び方」で解説しています。
13. よくある質問
Q1. 注文住宅の住宅ローンはいくら借りるのが適正ですか?
A. 「銀行が貸してくれる額」ではなく「手取りから返せる額」で決めます。毎月返済額が手取り月収の20〜25%以内に収まる借入額が目安です。返済期間35年・金利1.8%なら、年収600万円で約3,110万円(返済負担率20%)〜約3,890万円(同25%)が目安になります。審査上の上限は約4,550万円まで出ますが、その差の約1,440万円が家計を圧迫する部分です。固定資産税・火災保険・修繕積立で月2万〜3万円の固定費が増えることも見込んでください。
Q2. 注文住宅の「つなぎ融資」とは何ですか?費用はいくらかかりますか?
A. 住宅ローンは原則、建物の引き渡し時に実行されます。一方、注文住宅では土地の残代金・着手金・中間金がそれより前に発生するため、その間を立て替える短期ローンがつなぎ融資です。金利は年2〜3%台が一般的で、土地2,000万円を8か月・着手金1,000万円を6か月つないだ場合、利息と事務手数料・印紙であわせておおむね55万〜60万円かかります。工期が延びるとつなぎ期間も延びて利息が増えるため、余裕を持った資金計画が必要です。
Q3. 変動金利と固定金利はどちらを選ぶべきですか?
A. 「どちらが得か」ではなく「どのリスクなら受け入れられるか」で選びます。借入額が年収の6倍を超えるなら、返済額が確定する全期間固定(フラット35など)が安心です。借入に余裕があり、繰上返済用の貯蓄が別にあるなら変動のメリットを取りにいけます。変動の5年ルール・125%ルールは返済額が据え置かれるだけで利息が減るわけではなく、未払利息が発生する可能性もあります。「金利が2%上がっても払えるか」で判断してください。
Q4. 住宅ローンの事前審査はいつ受ければよいですか?
A. 土地を探し始める前に受けてください。人気の土地は申込が重なるため、事前審査が承認済みだと実務上優先されることがあります。また、自分たちの借入枠がわかった状態で探せるので、予算オーバーの土地に時間を使わずに済みます。事前審査の結果は3〜5営業日程度、有効期限は3〜6か月程度が一般的です。土地の売買契約には、ローンが否決された場合に白紙解除できる「住宅ローン特約」を必ず付けてください。
Q5. 住宅ローンの審査に落ちる原因は何ですか?
A. 多いのは、車のローンやカードローン・リボ払いなど他の借入、使っていないクレジットカードの利用可能枠、携帯端末の分割払いの延滞、転職直後で勤続年数が短いこと、団信に加入できない健康状態、再建築不可など物件側の要因です。審査中に転職する、車を買う、カードを新規作成する、支払いを延滞するのは避けてください。心当たりがある方は、土地探しの前にCIC・JICCなどで信用情報を開示して確認しておくと安心です。
Q6. 夫婦で借りるならペアローン・連帯債務・収入合算のどれがよいですか?
A. 2人とも住宅ローン減税を受けたいならペアローンか連帯債務、どちらかに万一があったときに残高を全額消したいなら連帯債務+夫婦連生団信か、主債務者に集約する収入合算が向きます。収入合算(連帯保証)は合算者に減税も団信も付きません。将来どちらかが退職・時短する可能性が高いなら、1人で返せる範囲に借入を寄せるほうが安全です。ペアローンは離婚時の整理が最も難しくなる点も、契約上のリスクとして知っておいてください。
Q7. 住宅ローンの繰上返済はいつすればよいですか?
A. 利息を減らす目的なら「期間短縮型」が有利です。ただし住宅ローン減税を受けている13年間は、繰上返済で年末残高が減ると控除額も減ります。借入金利が控除率0.7%を下回っている場合(変動0.5%など)は、減税期間が終わってから繰上返済するほうが有利になることがあります。また、繰上返済で返済期間が10年未満になると住宅ローン減税の対象から外れるため、必ず確認してください。
14. まとめ
注文住宅の住宅ローンは、「いくら借りられるか」ではなく「毎月いくらまで返し続けられるか」から逆算するのが失敗しない近道です。
- 審査上の上限と無理のないラインは、年収600万円で約1,440万円の差が出る
- 返済額は手取り月収の20〜25%以内。固定資産税・保険・修繕積立で月2万〜3万円の固定費増も見込む
- 金利タイプは「どれが得か」ではなく「どのリスクなら受け入れられるか」で選ぶ
- 注文住宅は引き渡し前に土地代・着手金・中間金が必要。つなぎ融資なら55万〜60万円程度の費用を見込む
- 金融機関選びは金利の低さより先に「つなぎ融資・分割実行に対応できるか」を確認する
- 事前審査は土地を探す前に受ける。土地の契約には住宅ローン特約を必ず付ける
- 審査中の転職・車の購入・カード新規作成は避ける
- 住宅ローン減税の13年間は、繰上返済のタイミングを控除額と比較して判断する
住宅ローンは、土地の契約条件・工事請負契約の工程・家計の返済計画が同時に絡む分野です。注文住宅の資金計画を具体的に検討したい方は、株式会社アラカワの家づくり無料相談会をご利用ください。返せる額の逆算から、金融機関の選び方、つなぎ融資のスケジュールまで、4資格を持つ代表が一緒に整理します。
各テーマの詳しい内容は、費用「堺市で注文住宅を建てる費用と進め方」、予算配分「土地と建物の予算配分で失敗しない考え方」、総額「土地なしで注文住宅を建てる総額はいくら?」、補助金・減税「堺市で注文住宅を建てるときに使える補助金・減税」、家づくり全体「堺市で注文住宅を建てる完全ガイド」もあわせてご覧ください。既存の家を活かす選択肢は「堺市でリフォーム・中古リノベーションする費用と相場」、住宅タイプ別は「堺市で平屋を建てる費用と間取り」も参考になります。

監修者
荒川孝行(株式会社アラカワ 代表取締役)
- 保有資格: 二級建築士/宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー
- 経歴: 元大工。注文住宅・リフォーム・不動産を一貫して手がける地域工務店代表
- 得意分野: 土地探し・住宅ローン・資金計画・間取り設計の横断相談









